『  奇人倶楽部  ― (4) ― 

 

 

 

 

 

 

「 うふふ・・・・ ほっんと これ・・・いつ撮られたのか全然気がつかなかったわ 」

フランソワーズはクスクス笑い声までたて 一枚の写真に見入っている。

アルバムから取りだしたそれは ―

 

リビングのローテーブルの側に ジョーとフランソワーズが座っている。

周囲には 仲間たちのズボンやらジャケットの裾やら袖口が見えるので

皆が わやわや・・集まり好き勝手に過ごしていた時だっただろう。

テーブルの手前には 飲み差しのコーヒーカップやら ビール缶なんかもならんでいるし、

柿の種や小粒のチョコなどのお菓子もちらばっている。

 

「 う〜〜ん? なに、見てたのかなあ・・・? 写真? 記事・・・?

 ピュンマったら〜〜 シャッター切った音もきづかなかったわあ 」

 

二人の目線はテーブルの上に注がれているけれど 一緒にいるうれしさ は

写真からでも はっきりと感じ取れる。

この二人は < 恋人同士じゃない > なんて言うのはよほどのへそ曲がりだろう。

楽しい笑い声や 甘い雰囲気までもがこぼれでてきそうだ。

 

「 最初は照れくさくて・・・ でも うふふ〜〜 ホントはうれしいんだもの。

 これはわたしの宝モノなの。 」

 

こんな風に微笑みあう姿を写真に残せる日が やってくる・・・ そんなことが

夢みたいな気がする。

当たり前の日 が再び自分の周りに流れはじめてことを フランソワーズは

しみじみと感じることができ その意味でもこの写真はとても大切な一枚だ。

べったりくっついているわけでも ならんで寄り添っているわけでも 

そしてみつめあっているわけでも ない。

でも ― 二人で同じモノを笑い合ってみつめているその姿は

幸せ そのもの に思えるのだ。

 

「 ふふふ・・・ この写真 ・・・ アルバムに入れていたけど そうなのよね〜〜〜

 大事な記念としてとっておきたいの。 あの鏡をフォト・フレームにして ね。 」

 

彼女は その大切な一枚をそうっと封筒にしまった。

好意を持ち合っているのはよ〜〜くわかっている。

照れ屋なジョーが一生懸命、 < すきだよ〜 > とアピールしているのも

勿論 ちゃんと感じている。

「 う〜ん ・・・ 意地悪なんかなじゃいわ。

 だって ― アイシテル ってことはちゃんとはっきり言ってほしいの。

 わたしだって はっきり言います、 わたし、ジョーが好き ってね 」

封筒を上から大切に撫でる。

「 これは わたしの宝モノ。 一生 取っておきたいの。 

 今度もう一度あの店にもってゆくわ。 」

 

 

「 あの ・・・ さ。 明後日・・・ ヒマ? 」

数日後 ジョーは帰ってくるなり言った。

「 お帰りなさ〜い ジョー   え?? 」

「 ・・・ あ  た ただいま〜〜  あの さ これ! 」

「 はい? 」

彼はポケットからなにか 紙をひっぱりだし差し出した。

「 これ・・・ ? あ ゴミ? 」

「 ち ちがうよぉ〜〜 このチラシ みて 」

「 チラシ?  やぁだぁ〜〜 くしゃくしゃじゃない? 」

「 あ は・・ ズボンのポケットに突っ込んでたから さ ・・・ あ〜 ひで〜  

 無くさないよ〜にって 思ったんだけど 

「 え・・・っと?  ああ なにかの公演なのね? 」

「 ウン  あ あの〜〜〜 よかったらさ〜〜

  いってみないかな〜って思って  あの 面白そ〜かな〜って ・・・ 」

「 ?  どれどれ・・・ なあに?   へえ マジック ショー?

 ジョーってば こういうの、興味があるの? 

「 興味ってか ・・・なんか面白そうかな・・・って思って 」

「 ふうん・・・ あらあ〜    まあ  小さな頃みたサーカスみたいだわ 」

フランソワーズは 広げた紙のシワを伸ばしつつ眺めている。

「 さ  さーかす? ・・・ 行ったこと あるの??? 」

「 ええ。 子供のころ 近所の広場によく来たのよ。 父に連れていってもらったわ。 

 兄もね〜 好きだったの。 」

「 へ ・・・ え ・・・ ぼく、本とか映画で見ただけだよ 」

「 日本にはないのかしら?  面白かったわよ 」

「 ・・・ パンダが逆立ちしたり ライオンが火の輪潜りしたりするの? 」

「 そういうのはなかったけど・・・ 空中ブランコや ほら ・・・ このチラシみたいな

  魔法使いのショーも あったのよ 」

「 ふうん ・・・ あ ! そ それでさ  これ ・・・ 行こうかな〜〜って。

 マジック ・ ショー なんだけど。 」

「 楽しそうじゃない? 行ってくれば? 」

「 あ そ そのう〜〜〜 一緒に行かない かな〜〜〜 って ・・・ 」

「 え。 いいの??? 」

「 ・・・ 一緒に行きたいデス。 明後日 暇ですか 」

ジョーはイッキに言うと ぺこり、とアタマを下げた。

「 嬉しいわあ〜〜 誘ってくれてありがとう! 一緒に行きましょ♪ 

 うふふ〜〜〜 面白そうねえ〜〜〜 

「 ・・・え  ほ ホント? 」

アタマを上げた彼は びっくり顔だ。

「 ええ。 ねえ ここ・・・この会場 どこ? ヨコハマの港の方 ? 」

「 え・・・ あ そう〜だね 多分 ・・・

「 多分って ジョーも知らないところ? 」

「 あ  ・・・ え〜〜と? 」

ジョーは 慌ててチラシを覗きこむ。

 

    ヤベ・・・ 場所の確認 してなかった〜〜〜

   

    でも でもでもでも〜〜〜 フランと一緒だよ〜〜〜

    やた〜〜〜〜〜〜っ 

 

「 ・・・ ああ 駅からちょっと離れてるね〜  特設会場 って書いてあるから

 どこかのホールとかとは違うらしいよ 」

「 ふうん ・・・ ますますサーカスみたい  うふふ 楽しみ〜〜〜 」

「 ぼくも!  」

「 マジック・ショー って多分と〜〜っても面白いと思うわ。 

「 ウン ・・・ あの店みたいな雰囲気なのかなあ 」

「 あの店? 」

「 ほら・・・ あの路地の奥の・・・ 

「 ああ ああ あのお店ね?  ジョーがくださったコレの 」

彼女は 襟元の輝石をちょっと押さえた。

「 そう そう。  不思議な店だったよなあ 

「 そうねえ  違う世界への入口 みたいだったわ 」

「 うん なんかワクワクするね 」

「 ええ、 うわ〜〜〜 楽しみ〜〜〜〜 」

「 ぼく もさ  えへへ・・・ フランとデートだぁ〜〜〜 」

「 はい? 」

「 あ なんでもない ・・・  場所はさ、多分港の外れの方だと思う。 」

「 ふうん  でも一緒なら安心ね 」

「 えへ ・・・ あ〜〜〜〜〜 ぼくも楽しみだなあ 」

二人は シワをのばしたチラシを一緒に覗きこみ、あれこれおしゃべりを楽しんだ。

 

 

  ひゅるり〜〜〜   海からの風が吹き抜けてゆく。

 

「 きゃ ・・・・  もう〜〜 

スカーフを押さえれば髪がふわふわ巻き上がり フランソワーズは大苦心している。

「 なんだってこんなに風が吹くのぉ ・・・ ウチだって海の側なのに

 こんな風 じゃないわよぉ〜〜 」

お気に入りのワンピースにスカーフを巻き 春っぽいコートを着てみた。

「 ちょっとまだ寒かったかも・・・ でもぉ〜 ジョーが誘ってくれたんだも〜ん♪

 女子としてはぁ〜 一番好きなモノ、着たいじゃない?  きゃ・・・ 」

意地悪な風が またまたコートの裾を跳ね上げる。

「 もう〜〜・・・・ えっと〜〜〜 こっちでいいのかなあ ・・・ 

 

約束の日の夕方、 フランソワーズは港街の外れを一人で歩いていた。

ジョーのお誘いの ≪ マジック ・ショー ≫、一緒にゆくはずだったのだけれど。

「 ・・・ 遅いわねぇ ・・・ 電車とか遅れてるのかなあ 」

メトロの終点で フランソワーズは何回も時計を見ていた。

約束の時間を過ぎても 茶色の髪は改札口に現れないのだ。

「 う〜〜ん ・・・ メールか電話してみようかしら。 でも バイト中なら

 みられないわねえ ・・・  あら? 」

ポケットの中で スマホが呼んでいる。

「 !  ジョーだわ! ・・・ アロー?  ジョー? 

 ・・・ え ・・・ え ええ  ええ・・・わかったわ

 ね 場所、もう一回おしえて。 わたし チケットしかもってないもん。

 ・・・ 住所 ね。  ウン ・・・ わかったわ。

 うん・・・じゃ先に入ってるわね。  ええ ええ 気をつけて・・・待ってるわ。

ふう 〜〜〜 溜息ついて、スマホをしまった。

「 がっかり。  なるべく早く来てくれるといいなあ 」

ジョーはバイトが終わらないので 先に、と電話してきたのだ。

 

≪ ごめん〜〜〜 なるべく早くゆくから〜〜〜 先に行っててくれる?

 え 場所?  チケットに・・・あ  名前だけかあ〜   特設テントだからなあ ≫

 

ジョーはごそごそ例のチラシをひっぱりだし、住所を告げた。

「 わかったわ ・・・  え?  スマホのナヴィをつかえって?  わかりました。

大急ぎで住所を書き留めた。

「 ふ〜〜ん・・・ わたしを誰だと思ってるのかな〜〜〜 ジョー君はぁ・・・

 003 がわざわざこんなちっぽけな機械のナヴィ 使う必要アリマセン。 」

003は いや フランソワーズは張り切って歩き出した。

住所は聞いたし、観客たちも集まってくるはずだからすぐに見つかるはず、と思った。

「 うふふ〜〜 知らない町をあるくってワクワクするわ〜〜〜

 モトマチのあのお店を探すのも面白かったけど ・・・・ 今度はどうかしら。 」

 

  ところが ―  ひゅるる〜〜〜 さかんに寄ってくるのは海からの風ばかり。

 

「 う〜〜ん??  こっちでいいはず、よねえ ・・・ ここが浜通り でしょう? 」

住所表示通りにゆくのだが だんだん建物が疎らになってきた。

空き地が多い、というより ひとつひとつの建物が大きくそれなりに古びていて・・・

店舗などはまったく見当たらない。

「 ・・・ この辺りって・・・ 倉庫街 なのかしら・・・

 誰も歩いていない ・・・ え〜〜 ここもヨコハマよねえ・・・ 」

きょろきょろしつつ だんだん心細くなってきたころ ― 

 

  バタン。 少し先の大きな建物の陰から 老人が出てきた。

 

「 あ・・・ あの〜〜〜 」

フランソワーズは慌てて駆け寄った。

「 ・・・ あ? 」

「 あの・・・ 道 教えてください 〜〜〜 」

「 道? ・・・ アンタ、こんなトコ、若いオンナノコがウロウロするもんじゃないよ 」

老人は渋い顔でフランソワーズを見た。 

「 あの ・・・ 特設テント ってこっちですか ? 」

「 特設テント?  あ〜〜 あの見世物かい。 」

「 みせもの?? 」

「 なんか 夜になると人あつめてぴかぴかやってる小屋だろ 」

「 あ ・・・ そうなんですか? 」

「 なにやってるかしらんが ・・・  外国の娘さん、この辺りは物騒だよ、

 暗くならないうちに街中まで戻った方がいい。 」

「 ・・・ ぶっそう ・・って ・・・ ? 」

「 今どきって思うかもしれないけどな  人浚い がでるんだ  」

「 ひとさらい?? なんですか それ。 」

「 ああ わからないか。 あのなあいつのまにか 人が消えてゆくんだ 

「 きえる・・・? 」

「 行方不明 とかも言うけどな。 」

「 あの・・・警察には ? 」

「 どうもなあ・・・消えた人が何処から来たかよくわからんので調べようもないらしい。 」

「 あのぅ ・・・ この辺って倉庫がいっぱいあるところ ですよね?  」

「 以前はごく当たり前の倉庫街だったんだ。 それなりに人の出入りもあったし。

 人気 ( じんき ) は荒くても物騒な雰囲気などなかったんだが 」

「 まあ ・・・・ 」

「 見世物小屋はこの先の角を左だ。  見たらさっさとお帰り。 危ないよ 」

「 は はい ありがとうございます。 」

フランソワーズはぺこり、とアタマを下げると 足を速めた。

「 ・・・ 大丈夫 よ。 特設テントで待ってればジョーと会えるし・・

 帰りは安心よ ね 

教えられた角を曲がると  ―  空き地に黒いテントが設営してあった。

ちらほら 人影も見えた。

「 あ・・・ ここね!  あのチラシも貼ってある〜〜〜 よかった! 」

彼女は ≪ マジック・ショー  ≫ と描かれた看板の方に駆けて行った。

 

 

  はっ はっ はっ ・・・!

 

茶髪の青年がかなり真剣な表情で走っている。

「 う〜〜〜〜 こんな時間になっちゃったよ〜〜〜  」

自分が誘った ≪ マジック・ショー ≫ の開演時間はとっくに過ぎている。

「 ・・・ チケット 渡しておいてよかった〜〜〜〜 う〜〜〜〜

 普通に走るのって〜〜〜 かったるいよ〜〜〜〜〜 」

左右を見回せば 人通りもほとんどない。  夕闇から夜の時間になり始めている。

 

   加速そ〜ち ・・・ するか ??

     !  だめだあ〜〜〜  この服、燃えちゃうし・・・

 

フランソワーズと一緒♪ と 彼なりに一番気に入っているトレーナーにちょっと

気取ってジャケット〜〜 なのだ。

 ( いや ・・・ 燃えちゃったらもっとマズイだろう とは思うが。 )

「 始まってる 始まってるよ〜〜〜〜〜う〜〜〜 ! 」

だだだだ ・・・ ! 

倉庫街だというのに トラックの一台も通らないことに ジョーはまったく気が回って

いなかった。

 

「 ・・・ ! あ  あの ・・・ ! 」

特設テントの入り口には 誰もいなかった。  入口には帳がさがっている。

「 あのう ・・・ 入ってもいいです ・・・か? 」

そうっと端っこをめくりあげていると ―

「 あ〜〜〜?  もう始まってるんだけどなあ〜 」

中から 舞台メイクも濃い男性が顔を出した。

「 ああ あの  すいません〜〜〜 遅くなって・・・ これチケット〜〜 」

ジョーは慌ててチケットを差し出した。

「 ・・・ あ〜。 どうぞ〜 すまないけど 後ろの方でみてくれるかなあ

 マジシャンって結構気にするんだ 

「 すいません〜〜 ありがとうございます 」

「 ― 待ってた よ  魔子が さ 」

「 はい? 」

「 いや  どうぞ楽しんでいってください 」

「 ど〜も〜 」

帳をめくり ジョーはこそっと中に入った。

 

「 え・・・っと?  あ こっちが空いてる か ・・・ 」

テントに中は 思ったよりも広かった。

中央に舞台ができていて 虹色の照明が集中している。

少しぼわぼわした感じで音楽がながれ その中で黒づくめの男が ≪ マジック ≫ を

披露していた。

「 あ やってる やってる・・・ あれがマジシャンかあ〜  あ すげ・・・ 」

定番の? シルク・ハットの中から鳩やらリボンやらキラキラしたものが流れ出ている。

「 あはは ・・・ このタネはぼくだって知ってるけど 手際がいいなあ〜

 見てて楽しいや。  あ いけね・・・ フラン〜 どこにいるのかな 」

しばし舞台に気を取られていたが 彼は慌てて彼女を探しはじめた。

「 う〜〜ん?  ・・・ 脳波通信で呼んじゃおうかな 〜〜 っとダメだな〜

 フラン 嫌がるもんな〜〜  えっと・・・?  あ いた! 」

やっと彼女をみつけると ジョーは身を低くして近づいていった。

「 ・・・ フラン 〜〜〜 」

ジョーは彼女の隣の席にすべり込んだ。 

「 あ ジョー〜〜〜 よかったわ、まにあって 」

「 ウン ・・・ でもそろそろお終いかも 」

「 ちょっとでも一緒に見られて嬉しいわ。  ね 次はフィナーレですって。 」

「 あ もう?  ざ〜んね〜〜ん 」

「 なんかね〜 出演したマジシャンたちが全員出てきて それぞれ自慢のマジックを見せるんですって。」

「 へえ〜〜  あ 出てきたよ 」

「 うわあ〜〜〜 たくさんいるわねえ 」

「 ウン・・・ 

 ― あの子 ・・・ いるかな。  彼は目を凝らす。

一様に黒系な衣装に身をつつんだ < マジシャン > 達が ステージをうめつくす。

中心に立つ一際長身の男性の合図とともに それぞれがマジックを始めた。

「 ・・・ すごい ・・・ 」

「 ウン ・・・ なんだか そうだなあ〜 洪水みたいだ ・・・  」

「 うふふ そうねえ 光と色の洪水ね〜 それになにか不思議な感じ  」

「 ウン ・・・  あ ! 

「 なに? 

「 あ ううん ・・・・ すご〜いって思ってさ 」

「 ええ 

 

    みつけた !  あのコ ・・・ 魔子 だ!

    わ〜〜〜 ちゃんとマジックやってる〜〜〜

 

あのツイン・テールの少女は 後列の隅っこで、それでもかなり手際よく≪ マジック ≫

をやっている。  空間にむかってぱちん、と指を弾くと 蝶々が輝き羽ばたくのだ。

「 へえ ・・・  あ 小さなモノ 投げてるんだ〜 ふうん 上手だなあ〜 」

「 なに なに ジョー? 」

「 あ  あの ほら。 すみっこの女の子のマジシャン さ。

 空中から蝶々をだしてるみたいにみえるよ 」

「 どこ? あ ・・・ あの人ね   わあ〜 ホント! 」

「 タネ みえるけど。  あ 次は  ・・・・ あれ?  

「 ・・・え?  あら ・・・ なにも見えないわねえ・・・・失敗かしら。 」

「 いや ・・・??? 皆手を叩いているよ? 」

「 そう ねえ・・・・ でも ・・・ ジョー、見える? 」

「 ううん  なにか 空中にむかって手をまわしているけど ・・・ 」

「 ・・・ ちょっと失礼〜〜  ・・・ やっぱり < 見えない > わよ? 」

「 失敗かなあ?  ・・・ でも 皆 拍手してるよねえ ? 」

「 そうよねえ  またまた失礼〜〜〜  ちょっと < 聞いて > みるわ

 ・・・・ え。 そ そうなの??  え〜〜〜??? 」

「 なんだって?? 」

「 ウン あのね・・・

 『 なにもないのに 鳩がでてきた! 』 『 小鳥が空間からきたよ? 』 ですって」

彼女は < 耳 > で周囲の音を拾った。 観客たちの会話を聞いたのだ。

「 え  だって見えないよ ぼくには 

「 わたしもよ。 < 眼 > を使っても ―  みえないわ。

 あのツイン・テールのマジシャンは 空中で手をひらひらさせているだけよ 」

「 だよねえ? でも 他の客たち皆は ― ??  」

「 わたし達だけ 見えない の?  そんなことって ・・・

 ! ・・・ サ サイボーグ だか ら ・・・?! 」

フランソワーズの声が少し高くなった。

「 それは  ―  あ ・・・ なにか始まる? 」

「 ― え? 」

舞台狭しとマジックを披露していたマジシャン達は 中央に集まった。

その中から 背の高いマジシャン、 いや 魔法使い然とした男性が進み出た。

「 ご来場の皆さま 〜〜〜 今宵は我々のマジックの世界に来てくださって

 ありがとうございました。  楽しいひと時をお過ごしになりましたか 」

 わ〜〜〜〜 パチパチ 〜〜〜 客席からは歓声と拍手が沸き起こる。

「 ありがとうございます  それではフィナーレの最後は 皆さまもご一緒に

 我らがマジック・ワールドへご案内いたします 」

彼は さっと手を上げ合図をすると集結していたマジシャンたちは 皆手にした小さな鏡を

照明に翳した。

「 観客の皆さまも お手元の < 鏡 > あなたの写真入りの鏡を どうぞ! 」

 

 ざわざわざわ ・・・・ 周囲の観客たちはごそごそポケットやらバッグをさぐっている。

 

「 ジョー ・・・ 鏡 って あの鏡? わたしの写真を入れてもらった? 」

「 ・・・らしい ね。 どうやら あの鏡を注文した人達がこのショーのチケットを

 買ったか貰うかしたらしい。 

「 ジョーも??? 」

「 いや。 あ〜 ぼくは間接的に知ったんだけど・・・ でも 関係はあるな。 」

「 ふうん ・・・ ねえ ねえ ジョー、あの鏡 出してよ。 持ってるのでしょう?」

「 ウン ・・・ えっと 」

ジョーはジャケットの内ポケットから引っぱりだした。

「 こう〜〜上に翳すみたいよ? 」

「 ・・・ こう かなあ〜〜 」

 

  ドロドロドロ〜〜〜〜〜 音楽が派手に盛り上がりカクテル光線がテント中を

ぐるぐると照らし ― 客の鏡に次々とヒットしてゆく。

 うわ ・・・ きゃあ ・・・ うお〜〜  きゃ

テントの中のあちこちから客の歓声が上がった  が  ・・・

「 ・・・?  あれ? なんだかヘンだ 」

「 そう ね  声が ― 騒ぎが静まってゆく ・・・ どうしたのかしら。

 あ ジョー あなたの鏡は ? 」

フランソワーズは 彼が手にしていた鏡を覗きこんだ。

「 うん ? 別になにも ・・・ 」

「 でも皆は ―  」

彼女はもう一度周囲を凝視した。 < 眼 >を使ったのだ。

「 !!  ジョー ・・・ 大変!  これ ・・・ ダメだわっ 」

「 え??? な なに ・・・? 」

「 見て!! 周りの人達! 様子がヘンよ! 」

「 なんだって?? 」

ジョーは慌てて観客たちを見回した。 彼も 003ほどではないが通常の人間を

遥かに超えた視力を備えている。

「 ・・・!? な ・・・ どうしたんだ? 皆 表情が ?? 

「 ね? 鏡をかざしてる人々 −  すう・・・っと表情がなくなってゆくの。

 虚ろな顔になっているわ 」

「 !  おい しっかりしてください! 」

彼らの周りでは 観客たちが次々にくたくたと座席に倒れ伏し始めた。

「 しっかりして! すぐに救急車を   え? 」

「 うん? 」

 

   なぜ お前たちは ― 我らに従わぬ?

 

ジョーとフランソワーズの前に 黒づくめのマジシャンが立っていた。

「 !  お前は  ― さっきのマジシャン ・・・・? 」

「 トップのマジシャンの人だわ!  でも ・・・ なんか ヘン ・・・? 」

 

   我々は マン の魂を集めるのだ。 ― マン になるために!

 

「 な なんだって??? マン ?? ニンゲンのことか? 」

「 このヒトたち・・・ ニンゲンじゃない の? 」

「 ええ そうよ。 彼らは スペクター。  マンになるために マンの魂を

 集めているの。 

「 ― 魔子 ・・・! 」

二人の前に  ツイン・テールのマジシャンが出てきた。 光る杖を手にしている。

「 そのために この鏡を使うの。  あなた達の魂もいただくわ・・・! 」

彼女はジョーが手にしていた鏡に さっと杖を振り 光を当てた。

「 ・・・??  な なぜ??? どうして反応しないの??? 」

魔子はうろたえ 

「 やめたまえ。 これ以上 罪を重ねるな。 」

「 な なぜ ??? あと一つで ・・・  あ 」

ジョーは彼女の手の杖を押さえた。

「 こんなことはやめるんだ。  さあ 皆をもとに戻せ。 」

「 そんなことはできない わ! 

 野望やぶれたスペクターは マンになれずスペクターにも戻れず ・・・

 あの仮の姿 ・・・ 蝙蝠やら山椒魚やらで生涯を終わらなければならないのよ! 」

彼女はジョーの手を振り払うと 光の杖を振り回した。

「 マンになりたい ・・・ ! スペクターはもういやよっ

 明るい日の光の下で 生きてゆきたいの ・・・! 

 だから  ―  アナタの魂を ちょうだい ・・・!  」

「 あぶないっ!! 」

「 !  フランソワーズ!! 」

ジョーの前にフランソワーズが飛び出した。

 

 ドン ・・・!  杖が フランソワーズの胸に当たった。

 

「 フランっ !? 」

 

  ぱ〜〜〜ん ・・・! 突然、ジョーのもっていた鏡が割れカケラが飛び散った。

 

    ぎゃあ〜〜〜〜  うわ〜〜〜〜〜  ぐぐぐぅ〜〜〜〜〜

 

突然 周囲に迫っていたマジシャンたちが苦しみだした。

「 な なんだ??? フラン 大丈夫か?? 」

「 え ええ ・・・ 写真に当たっただけ ・・・ 」

「 写真? 」

「 え ・・・ええ  これ 」

フランソワーズは ジョーとの写真を取りだした。

「 ・・・ あの鏡に入れてもらおうと思ってたんだけど ・・・ 」

「 写真が 鏡を砕いた??? 」

 

  シュ〜〜〜〜〜 

 

あちこちでマジシャン達が夜の闇に溶けてゆく。  魔子もどんどん影が薄くなってゆく。

「 ・・・ な なぜ ・・・

  マンよっ  私は マン になれたのに ・・・

 なぜ ・・・ アナタたちは どうして ・・・生きているの ? 

 なぜ ・・・ 私は 消えなければ ならない の ・・・ 」

彼女は悶えつつ ジョーたちを見つめている。

「 アナタは  人間とは 別の生き物 なのよ。 」

「 ・・・ そんなこと  」

「  いいえ わかるもの。

 なぜなら  わたし達も   人間とは  別の存在になってしまったから … 」

「 ・・・ 別の 存在 ・・・? 」

「 ええ ・・・

「 ・・・・・ 」

魔子は 鏡のカケラにまみれ ― 消えていった。

 

 

「 ・・・ 帰ろう フラン  ・・・ 」

「 そう  ね ・・・ ジョー ・・・ 」

二人はそっと腕を絡ませると 視線を落とし静かにその地を去った。

 

 

*******************************     Fin.      *********************************

 

Last updated : 04,19,2016.                 back      /     index

 

 

*************   ひと言   ************

やっと終わったぁ〜〜〜〜〜〜 ・・・・・

だらだらと続けて申し訳ありませんでした <m(__)m>